要約

背景

近年の観光・旅行産業では、旅行者のニーズ変化に応じて、ガイドの重要性が高まっている。しかし、ガイドのサービス品質に関する国際的な基準は設けられていない。ガイドに対して普遍的に適用できる品質基準があれば、様々な団体・個人がガイドを育成する際の指針として活用することができ、中長期的にサービス品質の向上にも繋がる。

ガイドスキルマップの対象と策定手法

『ガイドスキルマップ』とは、通訳の有無や、案内の対象を問わず、ガイド人材の育成やサービス品質の向上を目的とし、これまで日本国内だけでなく、国際的にも整備されていなかったガイドに求められる素養(スキルセット・行動基準)を定義したものである。
『ガイドスキルマップ』の策定には、職種などの単位で定義された「コンピテンシー」を基準とし、採用、能力開発、評価などの人的資源管理を行うために整理されたフレームワークである「コンピテンシーモデル」を用いた。
現在活動しているガイドや、関連する企業・団体などへのインタビュー、国内外のガイド制度の調査を通じて、優れたガイドに共通してみられる行動特性を分析し、ガイドに求められる素養を5つの「領域」、計25個の「スキルセット」に整理した。
また、それぞれのスキルセットについては、客観的に評価できるよう「行動基準」を定めた。

領域・スキルセット・行動基準

「Mindset」「Basic Capabilities」「Communication」「Technique」「Knowledge」の5つの領域に分かれており、そのなかに計25個のスキルセットが含まれる。

「Mindset」はガイドが職務遂行において適切な言動を取るために求められる心構えについて定めている。「顧客視点」「リーダーシップ」「柔軟性」「多様性の尊重」「倫理・法令順守」の5つのスキルセットで構成される。

「Basic Capabilities」はガイドの職務遂行において求められる一般的な基礎能力について定めている。「体力・健康」「論理的思考能力」「創意工夫」「マネジメントスキル」「ITスキル」の5つのスキルセットで構成される。

「Communication」はガイドの職務遂行において求められる旅行者をはじめとする他者との意思疎通に必要な能力について定めている。「言語力」「傾聴力」「表現力」「交渉力」「チームワーク」の5つのスキルセットで構成される。

「Technique」は安心・安全かつ満足度の高いサービスを提供するために必要なガイド特有の専門技能について定めている。「旅程確認・作成」「準備・催行管理」「安全管理」「危機対応」「演出」の5つのスキルセットで構成される。

「Knowledge」は旅行者の案内や職務遂行において求められるガイド特有の専門知識について定めている。「歴史」「社会・文化」「地域特性」「国際」「業界」の5つのスキルセットで構成される。

具体的な活用方法・今後の展望

『ガイドスキルマップ』の活用方法として、以下のようなケースが考えられる。

  • ガイドの人材育成における活用
  • ガイドの評価における活用
  • スキルチェックや学習計画における活用



『ガイドスキルマップ』の活用・普及により、以下の効果がもたらされる。

  • それぞれのガイドの強みや弱みが明確となり、スキルアップのモチベーション向上に繋がる。
  • 育成方針やカリキュラムが体系立てて適切に策定され、ガイドの人材育成や品質向上の取組みの実効性が向上する。
  • 明確な基準に準拠した評価を行うことで、ガイドの能力や経験などの実態に即した適正な報酬を設定することができる。
  • ガイドの特徴や強みが明確になることで、旅行者のニーズに沿ったガイドの手配を行うことができ、サービスの品質向上に繋がる。



ガイドスキルマップ』の策定・普及を通じ、ガイドサービスにおける「品質の標準化」を進めることで、旅行者はいかなる場所でも安心・安全かつ満足度の高いサービスを享受できるようになる。結果的に、ガイドの需要が拡大することに繋がり、ガイドの活動機会もあわせて増加することになる。

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