フランス
概観
フランスには、公的に認められているガイド制度として、「プロツアーガイド」が存在する。同制度は、通訳ガイドを前提とした制度であり、母国語ガイドには特定の資格・認定制度は存在しない。
プロツアーガイドの認定を受けていないガイドも自由に活動することができる。ただし、国立博物館または歴史的建造物の案内に限り、登録簿に登録された旅行会社(旅行代理店、観光局など)のサービスを通し、各施設が認定するガイド、もしくはプロツアーガイドのみが案内できる*1。
ガイド資格・認定制度
ⅰ 制度概要
プロツアーガイドは、外国人旅行者向けに、案内業務を行うものを対象とした制度である。同制度は、2011年に制定された「プロのガイド資格もしくは修士号を持つ者へのプロフェッショナルガイドカードの発行についての法令」によって規定されている。
2011年までは、地域通訳案内士、国家通訳案内士、美術・芸術限定の地域通訳案内士など計4種類のガイド制度に分割されていたが、法改正により「プロツアーガイド」の1種類に統一されるとともに、認定の条件が簡素化された。2020年時点で、活動しているプロツアーガイドは3,500~4,500人と推計される。
ⅱ 資格取得・認定プロセス
プロツアーガイドは、全国で統一された試験は存在せず、特定の専門学校や大学での専門コースの修了などを通じて認定される。例として、以下のようなパターンが挙げられる。
- 大学・専門学校が扱う専門コースを修了する
- 大学・専門学校が扱う特定の科目を修了し、かつ修士号を取得する
- 欧州連合の加盟国または欧州経済領域に関する協定の締約国において、以下のいずれかの条件を満たしている
- プロツアーガイドに相当する職業の証明書、またはトレーニング修了の証明書を保有している
- 自国において最低3年間の期間、専門的な能力を用いてガイド活動を効果的に実行したことを証明する証明書を保有している
- 過去10年間で最低1年間の期間、プロツアーガイドに相当する職業に就いていた職歴の証明書、またはプロツアーガイドに相当するトレーニングを受けた資格・認定を保有している
- 歴史(美術史など)
- 地理的および文学的遺産
- 言語(基礎英語およびドイツ語またはスペイン語またはイタリア語)
- 観光技術(ガイド技術、芸術や建築の案内)
- インターンシップ(フランスまたは海外で最低12 週間)
- 職業に関連する法律とマーケティング手法
- 観光資産の管理
- 旅行、文化的またはスポーツ活動のサポート
- 地元観光の振興
- 文化・芸術・娯楽
本項では1の「大学・専門学校が扱う専門コースを修了する」について、フランス南部に位置するコートダジュール大学の「プロツアーガイドコース」を例に説明する*2。
【研修概要】
【研修内容】
フランス政府の定めるガイドラインを基に、以下に関する授業や実地研修を受ける。
ⅲ 資格取得・認定後の対応
講習会などは存在しない。認定の有効期限も特にないため、更新の必要もない。