スペイン
概観
スペインでは、州ごとにガイド制度が存在しており、全17の自治州のうち14州に導入されているが、州ごとで資格取得・認定プロセスに大きな違いはない。
例として、セビリア・グラナダ・コルドバをはじめ、多数の世界遺産を有する都市を持つアンダルシア州では、州法によって「観光案内士」の制度が規定されている。同制度は、母国語ガイドだけでなく、通訳ガイドの資格付与もあわせて行う。博物館や文化遺産の管理団体、機関の職員等の案内を除き、有償でガイド業務を行う場合は、同資格の取得が必須となる*1。
ガイド資格・認定制度
ⅰ 制度概要(アンダルシア州の場合)
観光案内士は、使用する言語を問わず、アンダルシアの歴史遺産を訪れる人々に観光情報サービスを定期的に提供し、報酬を得る活動を行うものを対象とした制度である。
同制度は、1999年に制定された「観光に関する法律第12号」によって規定されている。1964年に制定された法律によって民間の観光案内活動に関する規定が定められていた。しかし1994年に欧州連合司法裁判所が「他国で取得した資格が認可されないなど、スペインの法律に不備がある」との判決を下し、新たに「観光に関する法律第12号」が定められた*2。
同法では、観光サービスの質の向上を目的に、EU諸国で取得した資格・認定の扱いに関する内容が追加されている。
なお、同州の一部の観光施設では、本資格証を提示することで早期入場等の特典を受けることが可能である。
ⅱ 資格取得・認定のプロセス
観光案内士は、以下のいずれかを通じて資格付与される。
- 専用の試験に合格する
- 条例により指定された観光専門資格・観光ガイド専門資格を取得した状態で、観光案内士資格取得の申請を行う
- 特定の加盟国でガイド資格・認定を取得した状態で、観光案内士資格取得の申請を行う(ただし同州が定める要件を満たす必要あり)
本項では、1の「専用の試験に合格する」を例に、専用試験の概要を説明する。
【試験概要】
【試験内容】
試験は「筆記試験」と「語学試験」で構成される。
- 筆記試験
- 通訳説明
- 旅程設計
- 語学試験
「通訳説明」「旅程設計」の計2科目で構成される。
観光客が関心を持つ遺産・文化資産の基礎的な知識が問われる。
観光客向けのサービスや、旅程設計の方法などが問われる。
スペイン語と外国語を用いて、案内業務に必要な口述でのコミュニケーションや文章理解が問われる。地域によって対応言語数は異なるが、スペイン語、英語、フランス語を基本とし、ドイツ語、イタリア語などにも対応しているケースが多く見られる。
ⅲ 資格取得・認定後の対応
講習会などは存在しない。資格の有効期限も特にないため、更新の必要もない。