アメリカ
概観
アメリカでは、自治体ごとにガイド制度が存在しており、各々で資格取得・認定プロセスも大きく異なる。
例として、アメリカ全土でも有数の観光地が集積しているニューヨーク市は、市の法律によって「観光ガイド」の制度が規定されている。同市では、有償でガイド業務を行う場合、同資格の取得が必須とされている。一方、ニューヨーク市に次ぐ大都市であるシカゴ市では、シカゴツアーガイド専門家協会がツアーガイドの認定プログラムを運営しているが、ガイド活動を制限するような制度は存在しない。同様にハワイ州でも、大学が運営する認定プログラムが存在するが、有償でガイド業務を行う場合は、旅行代理店・ツアーオペレーターの認可が必要となる。
ガイド資格・認定制度
観光ガイド(ニューヨーク市)*1
ⅰ 制度概要
観光ガイドは、観光ツアーにおいて、人を何らかの場所や事物へ案内・先導する者を対象としたガイド制度である。
同制度は、同州の法律「消費者関連法」で規定されている。2003年には、ツアーの質の向上などを目的に改正が行われており、その際には従来の資格保有者も再度試験を受験することが義務付けられた。なお、観光ガイドが業務に従事する際は、規定のバッジを着用することが義務付けられている。
ニューヨーク市のニュースメディアによると、2018年時点で、観光ガイドの取得者は約3,000人となっている。
ⅱ 資格取得・認定プロセス
観光ガイドは、専用の試験に合格することで資格付与される。
【試験概要】
試験内容】
試験は「筆記試験」のみで構成される。
ニューヨーク市内の5つの行政区に関する歴史や代表的な施設に関する知識から、バスのルートや停車場の位置、旅行関連の専門用語が問われる。
ⅲ 資格取得・認定後の対応
講習会などは存在しない。資格の有効期限は偶数年の3月31日まで有効であり、最大2年間使用できる。資格の有効期限が切れた場合は、再度専用の試験を受験し、合格する必要がある。
ツアーガイド認定プログラム(シカゴ市)*2
ⅰ 制度概要
ツアーガイド認定プログラムは、シカゴツアーガイド専門家協会(CTPA)が運営するガイド認定プログラムである。あくまで民間の制度であるため、同市では、認定を受けていないガイドも自由に活動することができる。
CTPAは、シカゴ市の観光を促進するために1990年に設立されており、シカゴ市内の観光ツアー、コンベンション協会と連携したイベントへのガイド派遣・支援、各種トレーニングの提供等の活動を行っている。
同協会のウェブサイトによると、2020年時点で、175人以上のメンバー(ガイド以外も含む)が所属している。
ⅱ 資格取得・認定プロセス
ツアーガイド認定プログラムは、専用の試験に合格することで認定される。
【試験概要】
【試験内容】
試験は「パートⅠ」「パートⅡ」「パートⅢ」で構成される。
- パートⅠ
筆記試験が実施され、シカゴの文化や歴史などの知識が問われる。 - パートⅡ
プレゼンテーションの試験が実施され、所定の10枚のスライド(シカゴの観光地など)について、それぞれ2~3分間で詳細な解説を述べることが求められる。 - パートⅢ
実地試験が実施され、地図を用いずに目的地にたどり着けるかが問われる。
ⅲ 資格取得・認定後の対応
CTPAが独自に市内の建築や歴史に関する講習を実施しているが、受講義務は存在しない。ただし、認定を維持するためには、CTPAのメンバーであることが前提となるため、年会費の継続的な支払いが必要となる。
ハワイプロツアーガイド認定プログラム(ハワイ州)*3
ⅰ 制度概要
ハワイプロツアーガイド認定プログラムは、ハワイ州政府観光トレーニング協議会とハワイ大学カピオラニ・コミュニティ・カレッジ(KCC)が共同で設立したガイド認定プログラムである。同プログラムは、ハワイ州観光局の定める基準に準拠し、1993年から開始されている。
同プログラムの認定有無に関わらず、有償でガイド業務を行う場合は、旅行代理店もしくはツアーオペレーターの認可が必要となる。なお、ハワイ州政府は2019年に、州内の自然資源保護や旅行者の体験向上、ハワイのブランド保護などを目的に「プロツアーガイド認定制度タスクフォース」を招集しており、現在新たな制度構築検討が進められている*4
ⅱ 資格取得・認定プロセス
ハワイプロツアーガイド認定プログラムは、専用の試験に合格することで認定される。
【試験概要】
【試験内容】
試験は「知識試験」と「カスタマイズツアー設計試験」で構成される。
- 知識試験
ハワイの歴史、言語、文化や旅行者にサービスを提供する際の対応方法などの知識が問われる。 - カスタマイズツアー設計試験
顧客の好みや興味に基づき、ツアーの設計やカスタマイズを行うことができるかを問われる。
ⅲ 資格取得・認定後の対応
講習会などは存在しない。認定は2年間有効であり、有効期限が切れた場合は、ツアー会社を運営もしくは雇用されていることを証明すれば、再認定を申請できる。